先月のこと、教室のご近所の方がバッグを修理してほしいと、お見えになりました。
お母様ご愛用のハンドバッグ、お聞きしたところ40年ぐらい前のバッグらしいです。
出来るものなら、修理して是非使いたい! と、大切な想い出の詰まった物と
伝わってきました。
40年以上経っていると、分解するときに皮革が敗れてしまうだろうと・・思いつつも
バッグの中を覗いてみたい衝動に駆られて修理をお受けしました。
非常に良い仕上げのリアルクロコダイル、イタリア製のハンドバッグです。
さすがに40年以上経つと角の部分は少し擦れてはいましたが、クロコレザー自体は
まだまだ元気です。
昔のハンドバッグに多いスワローまちのデザインで、牛革を使用しているまちの
ステッチの穴から敗れてきています。
壊れたというより、牛革の油が抜けて、力が加わると敗れてしまう寿命だったように思われます・・・。
内装も寿命でしょう、合皮の化学反応の経年変化で表皮がボロボロになっています。
ステッチを慎重に外して、クロコとまちの牛革も慎重に剥がしていきますが、
牛革が破れてしまいます。(牛革部分は総取り替えするので破れてもかまいません。)
少しづつ分解していくと、なんと・・・このバッグを手掛けた職人のサインがしてありました。
“CHIARO”とサインしてあります。イタリア人の鞄職人”チャロ”さんでしょうか!?
きっとそうでしょう。3か所もサインしてあり、自己主張が強い無口な職人のようですね。
内装を落とした瞬間から暗闇の中に閉ざされてしまい、40数年間この時を待っていた感じが
してなりません・・・。
このサインボード(芯)も破れないよう慎重に剥がし、CHIAROの横にMASHIBU2011と
サインして再利用しました。